「信仰について」no.1の訳文変更

 現在、『天界と地獄』を翻訳しながらも『レキシコン』にも取り組んでいます。こちらは全仕事量から見れば8割ぐらい終わっていますが、ややペースが落ちています。今は項目「I」です。今月中に「I」を終えたいと願っています。そうした中、たった今、形容詞ignotus「知られていない」の用例を訳したところです。そこの例文として『信仰について』の1番「hodierna fides est fides ignoti」が出てきました。この『天界と地獄』の始まる前、一ヶ月ほど『信仰について』を連載しました。なのでこれは三ヶ月前のことです。そのとき「今日の信仰は知らないことの信仰である」と訳しました。覚えているでしょうか?
 さて、ignotiは形容詞ignotusの男性または中性の属格です。中性と見なせば、知らない「こと」であり、男性と見なせば、知らない「者」です。前者として訳したわけです。
 しかし、後者とすれば「今日の信仰は知らない者の信仰である」となり、文脈からみて、このほう優っていると思えます。すなわち、直前に「信じなくてはいけない」と言われ、直後に「盲目の信仰」と呼ばれるからです。長島訳「無知な人の信仰」の解釈がすぐれているとわかります。さすが長島さんでした(私は長島さんのラテン語の実力は相当なものと尊敬しています。その翻訳姿勢が私と異なるのです)。
 このようにたった三か月前の訳文を変更しなければならないほど私のラテン語は「発展途上国」です。この「天界と地獄」にしても皆様に「完成品」をお見せしているとは毛頭思っておりません。私が現在勉強がてらに訳しているものをそのままさらけ出している状態です。
 「完成してから世に発表する」というやり方もあるでしょう、しかし私の場合、自分がいつまでも完成しないような気がします(よい見方をすれば、いつまでも成長する)。不完全ながらも製品として世に出すしかありません。世にあるいろいろな製品は次々と改良を重ねてよい品になってきました。

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