最も多くの人に知られ、読まれているスヴェーデンボリの神学著作はおそらく、『天界と地獄』でしょう。
私が日本新エルサレム教会の出版社である静思社の実務を担当していた時代は今から30年も前のことですが、『天界と地獄』は毎年、全出版物の中でダントツの販売部数でした。
『天界と地獄』は明治の終わり、1910年に鈴木貞太郎の和訳によって初めて日本語での出版が行なわれました。出版元は英国のSwedenborg Societyで、有楽社という出版社をとおして刊行されました。
鈴木貞太郎という人は、仏教学者であり、特に禅仏教を国際的に知らしめた人物で、鈴木大拙という名で知られています。岩波書店からはたびたび『鈴木大拙全集』が刊行されており、その中にも『天界と地獄』の和訳が収載されています。
日: 2008年6月18日
原典講読『天界と地獄』について
『天界と地獄』はスヴェーデンボリが1749年~56年にほぼ毎年1巻、計8巻の『天界の秘義』をロンドンで発刊した後、その創世記の前半の解説の前後で語った事柄のうち、霊界に関することをまとめ、書き改めて、1758年、70歳のとき、同じくロンドンで発行したものです。同じときに「ロンドン五部作」とした発刊した『宇宙間の諸地球』『新しいエルサレムとその天界の教え』『白い馬』もやはり『天界の秘義』にあるものを書き改めたものです(もうひとつは『最後の審判』、これはスヴェーデンボリが前年に経験した事柄です。すなわち、「最後の審判」霊界で1757年に起こりました)。
これまで和訳書も多く出されてきましたが、それ以上に英訳書も多く(1778年に最初の英訳書が現われ、これまで最低でも20種あるといわれている)、また、各国語にも訳されていて、その翻訳書がどれほどの数になるかわかりません(その一つに私の訳がこれから仲間入りしようとしています)。
内容については有名なので言うまでもないでしょう。本書の表題の副題に「ex auditus et visis」とあるように、霊界で「聞き、見たことから」の著作です。霊界の実相を、本書以上に詳しく、整然と述べたものは、これまでになく、今後もないでしょう。キリスト教界だけでなく、全宗教界、全世界から注目を集めた本であり、本書がその後、全世界へ及ぼした影響は計り知れません。
さて、この講座では、(1)原文、(2)直訳、(3)訳文、と原典講読『信仰について』と同じ構成とします。関連して何か特別に語りたくなったとき(私は根からの雑談好きです)項目(4)を置きます。もちろんこの講座の特徴は、「(2)直訳」の部分です。ここがあるから「講座」といえるでしょう。
「『天界の秘義』から」の部分について述べておきます。
ラテン原典からの本邦初訳の長島訳では省略されています(長島氏は『天界の秘義』訳了後に完全版をつくる計画であった)。本講座ではもちろん取り上げます。そしてその(2)直訳部分では『天界の秘義』からの参照番号を省略し、また文章も簡単なものが多いので、(3)訳文も省略します。そして文頭のQuod「~こと」の訳出もしません。省略しても意味に変わりはなく、すっきりするからです。
「『天界の秘義』から」の参照番号については、なぜこのように大量に付けられているのは疑問に思います。読者の便を思えば、代表的な個所だけをよいではないかと思ってしまいます。それとも、読者にじっくり『天界の秘義』を読み直すひと時を持ってもらいたかったのでしょうか。
スヴェーデンボリは『天界の秘義』の「索引」をすでに個人用に作成していました(「索引」については『霊界体験記』でも作成しています)。それで、改めて、『天界の秘義』の著作を見直さないでも、この「『天界の秘義』から」の個所は、すぐさま執筆できたと想像しています。
天界と地獄の和訳について (2)
『天界と地獄』の和訳は、鈴木大拙以降、私が知る限り次のようなものがあります。個人的にすべて所有していたのですが、ある方に貸したところ返却してもらえたいため、発行年代など確認できませんし、記憶ちがいもあるかもしれません。詳しい情報をお持ちの方、情報提供や補足をお願いします。
河原萬吉(天理教の信者)
土井米造(牧師・東京新教会)
柳瀬芳意(牧師・日本新エルサレム教会)
渡会浩(大本教関係の方で医師)
鳥田四郎(牧師・新教会)
笹岡康男(おそらく大本教の信者)
長島達也(大学教授・初版・改訂版の2種類)
高橋和夫(大学教授・抄訳)
鈴木大拙は仏教学者であり、以降は、新宗教と呼ばれる天理教や大本教関係の方、それからキリスト教関係の人たちが、翻訳を手がけています。長島訳以外はラテン語原典からではなく、英訳を原本として翻訳されています。
このブログで公開される新訳は、ラテン語原典をいっしょに読みながら、翻訳を展開していくというこれまでにない画期的なこころみになると期待しています。