スヴェーデンボリは独特だったか(その3)

古い脳と新しい脳の機能
 新皮質は、すなわち新しい脳は、私たちが目覚めている時に活動的であり、全般的なやりかたで、人間の思考を支配しているが、しかし寝ている時は変化した段階へと閉ざされる。新皮質が眠っている時、運動機能を保ち続けることに仕える爬虫類の脳は、私たちの呼吸、心臓の鼓動、夕食を消化し続け、意識がなくてもよいようにからだ状態を変化させるが、しかしまた、大部分の人々にとって、眠りながら歩くといったような危険な行動は防いでいる。それでも、夢見ることとはほとんど関係しない。
 哺乳類の脳は、眠りの他の特徴を決定する。私が示したいことは、私たちが他の哺乳類と最も明らかに共有する脳のこの部分は、人間の脳の最もすばらしい特徴の根源であり、スヴェーデンボリはそれを自分の哲学を発展させるために、独特のやり方で用いたことである。その能力はいわゆる文明人にあるものよりも、いわゆる原始人の中でさらに明らかである。それで、スヴェーデンボリは正しくもいわゆる黄金時代に言及している。天的な、最古代の思考法は、生物学上の観点からは、古い脳が人間の知覚を支配している。
 現代人は、私たちが超越的な状態と見なすもの、すなわち古い脳からの眺望と、いわゆる自然的なもの、私たちの莫大な新皮質の産物との二重性を経験する。私たちがそれを自然的と呼ぶのは、私たちの大部分にとって超越的な状態が、原始人とある非常に創造的なひと人々にとっては、自然的であったし、またおそらく依然として自然的であるからである。その創造的な人々については後述する。しかし、大多数の人々には、もはや自然的ではない。Benzのスヴェーデンボリの伝記(『スヴェーデンボリ、理性の時代に幻を見る学者』Swedenborg Fundation, West Chester, PA, USA. 2002)を翻訳したGoodrick Clarkeは、その訳書の導入部分第8ページで、スヴェーデンボリが、超越的な状態は、神的でも自然的でもない想像上(imaginary)の場所である霊たちの世界、天使たちの世界への加入であると説明して、この自然的と超越的な状態の二重性を区別した、と言っている。「想像の(imaginal)」の言葉のほうがよい用語であろう、私はそれをHenri Corbinの本『スヴェーデンボリとイスラム密教』からとった。その本は、私たちが肉体の死後に入る天界と地獄として知られている王国を叙述している。Goodrick Clarkeはそれを想像の世界と呼ぶが、それは想像から含意されることとまったく異なり、超越的な状態に用いることできない。スヴェーデンボリはこの二重性を『天界の秘義』2469番以降の中で十分に繰り広げている〔注:そこでは内的な記憶と外的な記憶を論じている〕。彼は人間の記憶の性質を扱うとき、外的と内的に分けている。私は、外的な記憶が新皮質の制御下にあり、内的な記憶が古い脳の特徴であると考える。スヴェーデンボリは、内的な記憶は外的な記憶に極めてまさる、と言いっている。このことは、後述するいくつか例によって、同じくスヴェーデンボリ自身の例によって示そう。
 私たちのすべてにとって、寝ている間に、夢を見る経験とは、哺乳類の脳、古い脳の活動である。しかし、大部分の私たちは、特別なものを除いてその夢を思い出さない。最もよく知られている例が聖書にある、たとえばアブラハム、イサク、ヤコブの夢、特にヤコブの息子ヨセフのもの、また預言者ダニエルのものである。現代に記録されている夢は、やはり、同じように生き生きとした、非常に現実的で、非常に超越的なものであり、ある人々は、ちょうど聖書時代のように、スヴェーデンボリの体験のように、彼らは霊界に入っていると考えて、正しいものとしている。Andreas Mavromatisによる『催眠』と題する本が、Gray Lachmanにより、スヴェーデンボリ協会の最近の記事『モルペスの腕』に引用されており、催眠の豊富な例を与えている。そこから、私は以下の情報を得ている。〔注:モルペスとはギリシア神話で「夢の神」または「眠りの神」〕
 催眠は、眠りと覚醒の間の境界の状態を示す。これは古い脳が活動的で、新皮質が夢のない眠りの間よりも活動的ではあっても、古い脳の活動を抑圧しないで、いわばそれを記録できる、内的な記憶と外的な記憶が協働する状態である。ネコ、イヌ、鳥ですら夢を見るという経験上の証拠があるにしても、それらを私たちにとって特別なものにするのは、新皮質である。夢は、古い脳が新しい脳へ活動的に影響を与えることと見なされることができる。もし私たちが夢を覚えていて、それらに目覚めているときの行動を案内させるなら、私たちは古い脳に新しい脳を導かせることができる。私は、霊界が自然界にこのようにして入ってくると主張する。最古代の時代では、そしてある創造的な人々にとって、依然として古い脳の視野は「自然的」であるが、しかし今日では、大部分の人々にとって、自然的な視野とは「新しい」脳の視野である。

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